愛しい彼女と夜景デートをした。
彼女の生まれ育った小さなイタリア孤島の地元。リゾート地で有名な海沿いで。
黒々とした海の向こう側の岸に、クリスマスイルミネーションの夜景が見える。
遠目と違い、近づくと不気味に感じるほど古い港の湾岸で。似た男が2人、真剣に話す声が聞こえてくる。
僕の彼女は躊躇せず近づき、明るいブラウンの瞳で『おじさん、ちょっと彼と、あの辺りで話して来る』と波止場を指差し、声を掛けた。
『ああ。気を付けろ』
彼は低く返事しながら、屈強そうな皺の刻まれた顔と大きな目をこちらに向ける。彼は地元では有名な闇社会の中心人物だった。うっすらと波止場の明かりに照らされた男の顔は、日に焼けていて50歳より老けて見える。
彼女と付き合っていても、一般人の僕と立場が違うと脅す訳でもなく、じっと様子を伺われているのが居心地を悪くしていた。でも真剣に彼女が好きだから、堂々と接しようとも心に決めていた。
僕は黙って2人に会釈すると、先に進む彼女に続いた。古いチェーンの手すりの不安定な階段を降りて足場に立ち、何気に後ろを振り返ると、叔父と呼ばれた彼は未だに僕を見ていた。
変わらず遠くからでも迫力のある目線で。
でも微妙に不安そうな何かの意志を感じたので、僕は目線を受け止めたまま見返して、じっと立っていた。
そのうちライトが動き彼の顔が影で見えなくなった。
彼女の『早くこっち!』と促しにも急かされ、言われるままに暗い海に向かった。
幾つかの段を下り踊り場に立つと、突然眩しい、光に包まれた風景が現れた。
きっと地元しか知らない、絶景の夜景スポットだったのだろう。目を奪われている僕の横で、彼女が『きれい!』を連発して楽しそうな声を上げる。
何度も見ているであろう、その風景に素直に喜び、はしゃいでいる彼女を見ているうちに、堪らなく愛しくなって『この子とずっと人生を共にするんだ』と決心していた。
帰り道、彼女は別のルートがあると僕をひっぱり、大きなコンテナの集まる場所に連れて行った。薄暗く少し寒いが、夜空の星が明るく見える静かな場所でベンチに座り暫く話していた。
そろそろ、遅くなるのも悪いからと彼女を促し、歩き始めた。
フト、彼女の伯父達はまだ話しているのかな、と遠く振り返ると。
その手前、ほんの数メートル先から、ライフルでこちらを狙っている男がハッキリと目に入った。叔父に取り入ろうとして警戒されていた、黒髪の巻き毛で、目がギョロついていて鷲鼻で背の低い男。
名前を思い出す間もなく
左手に抱えた彼女を振り返ると同時に、銃声が聞こえ、彼女が僕に覆い被さった。
続けざまの銃声を聞きながら、僕たちは冷えきったコンクリートに落ちた。途中、倒れながら、彼女が僕の体を力一杯、握りしめた感触が忘れられない。
彼女は死んでしまって僕が生き残っている。と本能が告げた。全身の力が緩んだ彼女の重みを感じながら。瞬時に叔父に伝えねばと、もがいた。
でも風景は妙にハッキリしているのに、体が他人の物のように、フワフワと浮くばかりで動かせない。
無重力の中で抗っているうち、夜の風景に溶け込むように視界が暗くなり
同時に意識も溶けた。
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性別と国籍がまったく違う、そんな夢を見た。
『僕』は色白の、平均よりちょっと低めの身長で、すらりとした体型。少し長めの、癖の有る栗毛で中世的な顔立ち。
私が男だったら風の青年。
前世の一瞬だったのかと思った夢。
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